乳がんには、大きく分けて浸潤がんと非浸潤がんがあります。
ここでは、非浸潤がんと診断された方に向けて説明していきます。
非浸潤がんの特徴
非浸潤がんは、がん細胞が乳管や小葉の内側にとどまり、周囲の組織に侵入していない状態の乳がんを指します。
乳がんは、乳管(管)と小葉(ぶどうの房のような部分)から発生します。
その周りには、全身をめぐる血管やリンパの管が通っており、がん細胞はその流れに乗って全身へ周ります。

乳管や小葉の壁の中から出ていない → 血管やリンパの流れに乗らない → 全身へ転移しない
その状態が、非浸潤がん つまりは乳がんの早期ということです。

ステージは0になるよ
症状がほとんどなく、乳がん検診による画像診断で発見されることが一般的。
→マンモグラフィで石灰化で発見されることが多い。
非浸潤がんの治療
非浸潤がんは、正しく治療を行えば、十分に完治をめざせます。5年生存率はほぼ100%です。
一方で、治療しないと 浸潤がん(周囲組織に広がる乳がん)に進行する可能性 があります。
非浸潤がんの治療目標は、完全に病変を取り除き、将来的な浸潤がんへの進行を防ぐことです。
1.手術
手術の方法については、浸潤がんと同様になります。
MRIで乳房の中の広がりを確認し、がんの広がり部分は切除することが基本です。
非浸潤がんは、乳房内で広がっていることも多く、全摘が必要になることも多いんです。

非浸潤がんでステージ0なのに、全摘が必要?なんで???

乳管を「ホース」に、非浸潤がん(乳管内乳がん)を「ホースの中で広がる水」
として考えてみましょう。
ホースにゆっくりと水を流します
浸潤がんの場合 ホースが破れているので、その場で水漏れしてしまいます。周りがびしゃびしゃになりますが、全体に広がるのはゆっくり…
非浸潤がんの場合 ホース内で水は全体に広がりやすい。乳管は「枝分かれした細い道の集まり」のような構造をしているので、がん細胞がホースの中であちこちに広がりやすいのが特徴です。



逆にステージⅢでリンパに転移があったとしても、乳房内では広がっていなくて温存が可能なこともあります。
2.ラジオ波熱焼灼療法
適応については、浸潤がんと同じになります。
ラジオ波焼灼術(RFA)早期乳癌適正使用指針 日本乳癌学会HPより
3.放射線療法
乳房温存をした場合、残した乳房での再発を防ぐために行います。
回数、方法は浸潤がんと同じになります。
非浸潤がんの患者さんの悩み
・ちゃんと検診を受けていたのに、なんで全摘しないといけないのか?
非浸潤がんは、自覚症状が無く検診で発見されることが多いとお伝えしました。
定期的に検診を受けていた、早期で見つかった、それなのになぜ?全摘??
部分切除(早期)< 全摘(進行) という印象を持つ方、多いですよね。
局所(乳房) と 全身は分けてかんがえる
乳がんの治療を考えるとき、めちゃくちゃ大切な考え方です!
早期、進行というのは、がんが全身に与える影響、つまりはがんが生命に与える影響で考えられます
非浸潤がんは早期ですが、乳管内で広がりやすいこと、そして取り切ることが一番の治療です。
説明を受けても、なかなか受け入れることはむずかしいですよね。
非浸潤がんの方の全摘の方は、(浸潤がんよりも?)落ち込まれる方が多いと感じます。私見ですが…

再建や人工乳房など、いろいろな選択肢をふくめて、自分が一番大切にしたいこと
を一緒に考えていきましょう。
・みんなに「早く見つかって良かった」といわれる
え?何がいけないの??と思うかもしれませんが、悩まれる患者さんは、実は結構多いです。
周囲の人、家族も励ますために「早く見つかって良かった」と言ってくださるんですが、
どれだけ早期であっても、乳がんの診断はつらいことです。
早期だからつらいと言えない、自分でも「早期で良かった」と無意識に感情に蓋をしてしまう・・・
そして術後、傷を見たときに乳がんである実感、蓋をした感情が溢れてくることがあります。

落ち込んでもいいんです。つらかったね、がんばったね と自分を抱きしめてあげましょう。
・手術が終わると治療が終わり
非浸潤がんは、手術が終わると(温存の場合は放射線治療が)基本的にはあとは経過観察になります。
術後の傷が問題なければ、(当院では)受診は半年後です。
周りの人や家族も、治療が終わったことに安心して、元にもどったような感覚になります。

手術に向けて張っていた気持ちが、手術後に一気にぬけて・・・
(先述したような)「蓋をした感情」が溢れてきて、つらい
なのに、病院に行くことがない=医療者に相談、気持ちを伝える機会がない
周りの乳がんの人は、薬を飲んだりしているけど、私は本当にいいのだろうか・・・
いろいろな不安が、自分では処理しきれなくなることがあります。
非浸潤がんの手術後に、うつ状態になった方も何人かいらっしゃいます。

不安があるときには、家族や友達に話をする、病院のがん相談支援センターなどを利用するなどをして、一人で抱え込まないようにしましょう。
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