
抗がん剤の必要性は分かりました。
なぜ脱毛するのかも分かりました。
でも、どうしても脱毛が受け入れられません

胸を取ることは仕方ないと思います
でも、髪も無くなるなんて耐えられません

このような相談は、少なくありません
乳がんの抗がん剤は、副作用で脱毛の頻度が高い薬が多いです。
どうしても、脱毛は避けたいという思いから、治療の選択肢が制限されることや、
なかなか決心がつかないという方は、たくさんいらっしゃいます。
残念ながら、脱毛を完全に予防する方法は無いというのが現状です。
しかし!!! そんな中、世界中で脱毛を少しでも軽減する方法について、
研究がされています。
そして髪を守るオプションとして、近年注目されているのが、頭皮冷却療法です。
今回はこの頭皮冷却療法についてお話ししていきます。
頭皮冷却療法とは
頭皮冷却療法とは、抗がん剤投与時に頭皮を冷やすことで頭皮血管を収縮させ、
毛根への抗がん剤の作用を抑制する脱毛予防法です。
2019年3月に厚生労働省により薬事承認されました。
2021年版の『がん治療におけるアピアランスケアガイドライン』では、
このように記載されています。
CQ1:「化学療法誘発脱毛の予防や重症度軽減に対する頭皮クーリングシステムは、
周術期化学療法を行う乳がん患者に限定して、行うことを弱く推奨する。」
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弱く推奨ってどうなの??と思うかもしれません。
しかし、個人差が大きく、明確な根拠が出しづらいと言われる
アピアランスケア領域
このガイドラインの中でも、弱くでも推奨が付いているのは
極わずかの項目しかありません。
パックスマン(PAXMAN)とは
PAXMAN頭皮冷却システムは、化学療法による脱毛を抑制するために開発された医療機器です。
専用の冷却液が流れるシリコンキャップを使用し、頭皮の温度を低下させることができます。

仕組み
- 冷却液(クーラント)が約-4℃に冷却され、キャップ内を循環します。
- 頭皮の表面温度は約18~19℃まで低下し、血流が減少することで毛母細胞への抗がん剤到達を抑えます。

使用のながれ
1. 事前準備
・頭皮冷却キャップを装着する前に、髪を湿らせ、トリートメントを塗布します
(キャップとの密着性を高めるため)。
・キャップを頭部に装着し、適切にフィッティングします。
2. 冷却開始
・抗がん剤投与開始30分前から冷却を開始します。
・冷却液(約-4℃)がキャップ内を循環し、頭皮の温度を約18~19℃に低下させます。
3. 冷却中
・抗がん剤投与中は冷却を継続します。
・必要に応じて一時的に冷却を中断することも可能です(例: トイレ休憩など)。

4. 投与後の冷却
・抗がん剤投与終了後も60~90分間冷却を継続します。
5. 冷却終了
・キャップを慎重に取り外し、頭皮や髪のケアを行います。
(自然乾燥や冷風ドライヤー推奨)
- 注意事項
・キャップの密着度が効果に影響するため、装着時の調整が重要です。
・頭皮冷却中は寒気や不快感、頭痛(三叉神経痛)が生じる場合があります。
効果
- 脱毛の軽減
完全に脱毛しないというのは難しいようです。
通常であれば、ほぼ100%の患者がウイッグを必要とする程度の脱毛が生じますが、頭皮冷却療法を使用すると、約半数の患者がウィッグを必要としない程度の脱毛で済むという報告があります。しかし、投与薬剤の違いや個人差は大きいようです。 - 脱毛からの早期回復
脱毛が進んだ方でも、その回復が早いことは明らかです。一般的には化学療法終了後1か月から頭皮全体に発毛がみられ、早い方では化学療法終了時には再発毛がみられます。
費用
頭皮冷却療法は保険適用外であり、全額自己負担となります。
各施設によって金額が変わってきますので、各医療機関に問い合わせが必要です。
こちらの鳥取市民病院のHPの金額が分かりやすくまとめられています。(一例です)

PAXMANの問題
1番の問題は、導入している施設が限られているということです。
日本でも、2024年時点で約40~50施設と言われています。

頭皮冷却を使用したい!と思ったら、どうしたらいいの??
多くの方は、乳がんと診断される前から、脱毛について考えて病院を選ぶことは
難しいと思います。
「初めから抗がん剤が必要で、近くに頭皮冷却装置のある病院がある」時は、
診断後でも、転院して治療を行えば良いのですが・・・(その病院の、患者受け入れ状況によります)
・手術のあとに抗がん剤が必要になった
・頭皮冷却のある施設が遠い
そんなときに検討すること
1.抗がん剤のみ、その施設で受け入れてもらえるのか?
なお、当院の適応の患者さんに制限なく選択肢として提案し続けるため、残念ですが、他院で治療されている⽅に対応はできておりません。
虎ノ門病院HPより
他院の患者を受け入れしている施設は少ないというのが現状です。

まずは、問い合わせをしてみることですね。
2.抗がん剤治療中に何かあった時、遠い施設まで通院することが可能か
抗がん剤治療中は、何が起こるか分かりません。
急な体調不良で病院へ行くことが必要になることもあります。
そんな時に、すぐに行くことが可能か、通院手段を考えておくことが大切です。
3.乳がんの治療は、経過観察も含めて5~10年の通院が必要です。
現在だけでなく、数年後も通院することが可能か、考えておく必要があります。

広い視野でよく考えることが重要ですよ。
脱毛への抵抗感から、冷静に考えられなくなっていませんか?
がん相談支援センターがある施設などで相談するのもおすすめします。
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